第12回例会

 行楽シーズン真っ盛りと言うこともあってか、参加人数は9人であったが、いつになく濃いゲームがプレイされていた。


 『PETER the GREAT』は、フルマップ1枚の会戦級ゲームであるが、18世紀初頭の東ヨーロッパの戦いということで、とても興味深いギミックがいくつか施されている。最初にユニットを見たときに、一部の兵科記号に見慣れないサインがあったりするので気になっていたのだが、ルールを読むと「擲弾装備」とのことで、擲弾兵と擲弾騎兵の2種類のユニットがある。これは特別ルールで用いるギミックであるが、攻撃時に擲弾を使うと、シフトを有利にできるというもの。まあ、古いゲームということもあって、基本ルール部分だけでも結構ガチャガチャだったので、選択ルールは使用しないことにした。
 ゲームは、移動と戦闘、回復をそれぞれ繰り返すというもので、火器が未発達だったことを受けて、弱ZOCのマストアタックとなっている。面白いのは、移動開始時に指揮官の指揮範囲内にいたユニットでないと、敵のZOCに出入りできないことで、その点で、指揮官の質が優れているスウェーデン軍の方が、展開の自由度は高い。
 選択ルールには、先に述べた擲弾のほかにも、竜騎兵の下馬攻撃や、方陣隊形といったタクティカルな要素があるかとおもうと、「スウェーデン王カルル12世が、会戦に先立って負傷していなかったら」(負傷していないために能力が高くなっている王のユニットが用意されている)とか、「ポルタワ包囲を命じられていたスウェーデン軍が、ポルタワの戦場に投入されていたら」といった、仮想戦設定のものまで、約20項目もあって、結構豪華である。まあ、これを全部やりきるほどの北方戦争ファンというのも、それはそれで珍しいだろうけど。


セットアップ状況:青がスウェーデン軍、緑がロシア軍


 セットアップをご覧いただきたい。マップ中央に2列に並んでいるのは、ロシアの騎兵部隊である。戦力もばらばらで、雑多な部隊であるが、数は多い。その後方でコの字型に隊列を組んでいるのは、ロシア軍の砲・歩兵部隊である。ここは野営地となっていて、5ターンになるか、あるいはスウェーデン軍が近接してこない限り活性化できない。また、騎兵の隊列からスウェーデン軍に向かっては、10個の堡塁が伸びている。堡塁は各々隣接の1ヘクスに対して、火力制圧を行うことができるので、スウェーデン軍には厄介な障壁となる。もっとも、急造の堡塁ということもあって、2個が建造中で役に立たないという仕掛けに泣ける。
 スウェーデン軍は隊列を組み終えていない。地図に配置されているユニットに後続して、増援として主力が投入される。両軍とも、軍のモラルが設定されており、部隊が除去されるのに応じて、モラルが低下する。これが一定の水準を下回ると、軍全体が士気阻喪し、0になると全面崩壊で敗北する。勝敗は、このモラルの比較に加えて、敵戦列後方の重要拠点の奪取如何にかかってくる。
 では、実際のゲーム展開を報告。基本的に超攻撃的な先生は、まずは邪魔な堡塁を叩き潰してくれんものと、稼動する全軍をもって、ロシア堡塁群に突撃する。騎兵を主体とする大軍が、堡塁を取り囲む様もすさまじいが、いきなり4個の堡塁が陥落するあたりはさすがだ。よりにもよって「パットン第3軍」で、攻撃に出るドイツ軍を演出する手腕は伊達ではない。しかし、こうしてスウェーデンの側から主戦場をマップ中央に設定してきたことで、ロシア軍も迷わず騎兵隊をこれにぶつける。


崩壊寸前のロシア軍中央!
弱ZOCゲームの常で、戦線はひっちゃかめっちゃか


 しばらくは一進一退の攻防が続いたが、攻撃の主導権を握っているのは明らかにスウェーデン軍である。指揮官の能力の差が、ここにきて顕著に現れている。そして3ターンに、スウェーデン軍の圧力に耐え切れなくなったロシア軍は、戦列を2つに割って、中央部を手薄にするという挙に出る。マップ向かって左側には森林地帯が広がっているが、騎兵部隊は森林にいる敵に対して攻撃を行えないので、わずかなユニットでも守りきれると信じての行動である。そして、空けた隙間にスウェーデン軍が飛び込んでくれば、野営地にこもる精強な歩兵部隊が動けるようになるのにくわえ、戦線を一直線に整えることによって、攻撃側のマストアタックに負担を強いるのである。まさに一石三鳥の防御作戦である。


大詰めの状況


 これに敢えて乗ってきたスウェーデン軍は、騎兵の戦列と野営地の境界にあった、戦力が小さいユニットめがけて全軍を投入。ロシア軍の計算ミスで、ボッカリ開いてしまっていた隙間から野営地への突入を許してしまったため、ロシア軍は大幅なモラルペナルティを被ってしまう。士気阻喪の一歩手前である。だが、強力な歩兵部隊が動き出したことによって、戦局そのものはロシア軍に傾き始める。この圧力を正面から受ける形となったスウェーデン軍も、続く乱戦の中で大損害を被り、双方とも士気崩壊の一歩手前となる。結局、あと1ユニットを先に除去させたほうが勝利という瞬間に、ロシア軍騎兵が吹き飛ばされて、ゲームはスウェーデン軍の勝利に終わる。野営地への侵入を許したことが、ロシア軍の大きな敗因となった。
 実際のポルタワの戦いがどのような展開を追ってロシアの勝利になったのかわからないので、事前の戦史研究がないまま始めたゲームであったが、展開がドラマティックで、かなり楽しめた。18世紀マイナー列強ファンには、避けては通れない道(?)だろう。堡塁に取り付いて、攻城用の擲弾を放り込んだりといった場面も演出したかったが、それは次回の楽しみに取っておこう。また、S&Tには、北方戦争をキャンペーンで扱う『On to Moscow!』というゲームもあるので、機会があればいずれ。というのも、先生は、なぜか17〜19世紀のヨーロッパが好きみたいなので、このあたりのテーマを持ちかければ、一も二もなく食いついてくること必定だからである。


 さて、別卓では遠田さんが主宰となって、「Total War 〜総力戦〜」の3人プレイが行われていた。『Paths of Glory』に手を出す前に、なんとしてもこのゲームだけは供養しておきたいという遠田さんの情熱にあてられた私が対戦する予定だったのだが、新人の大森さんなどに第1次大戦の流れをチュートリアルするのも、今後のためによかろうということで、急遽対戦組み合わせの変更となった。遠田さんが同盟軍。西側諸国は今回が2回目の参加の大森さんで、ロシアとバルカン諸国は神村君である。


『Total War 〜総力戦〜』
旧SPIの『World War One』を思い出させるコンポーネント


 マップをご覧いただければわかるように、ロシア・中東・アフリカ方面に地図が大きく広がっている。システムや展開については、旧SPIの「World War One」を意識していると思われるが、「World War One」は、前線の部隊が受けた損害を、本国がプールしている資源ポイントの消費で代用するというものだったのに対して、このゲームは資源ポイントを消費して、ユニットを生産し、戦闘の損害は実際にユニットが被るシステムになっている。SPIのゲームは、ユニットそのものが軍規模となっていて、国籍ごとにユニッ固有の戦力が決まっていたために、とにかく資源ポイントさえ蓄積してあれば、多少の部隊配置のミスはカバーできたのだが、このゲームでは実際に配置されたユニットが損害を被るために、ある程度長期的な視野で戦争を運営する必要がある。
 ここからは、私が聞いただけの話の転載であることを断った上で、プレイヤー諸氏の意見をまとめると、おおむね次のような評価であった。

・序盤の展開は、第1次大戦らしさが出ていたと思う

・上陸作戦や通商破壊などは、シンプルに実施できるのでプレイアビリティは良好

・ヘクス地形によってしかスタックが制限されないので、軍の質の違いが反映されていない

・3.5:1以上の比をたてなければ攻撃側のうまみがないので、敵のハイスタックには、どうやってもまともな比がたたない。それでも戦局を打開するために攻撃を仕掛けると、たいてい攻撃側に大損害が発生して、続く敵フェイズで高比率戦闘を仕掛けられて、部隊が壊滅する。結局、これを避けるためには、スタックを積んで何もしないという手に出るのが一番ということになり、手詰まり感がでるのが早い

・イベント性に乏しい

 「プレイの仕方がまずかったかもしれない」という反省もあったので、そのあたりの評価は、ぜひ実際にプレイする中で確認してほしい。


 で、『Total War』がプレイされていたからというわけでもないだろうが、ちょっと遅れて到着した金井さんと設楽さんは、恒例の『Paths of Glory(GMT)』を対戦していた。以下、金井さんからのプレイレポートは次のとおり。


 トータル・ウォーの向こうを張ったわけではないのですが、設楽さんと金井で何度目かのPaths of Gloryをプレイしました。  過去たしか3回ほどのプレイでは、どちらかの軍ユニットが補給線を切られて除去されていました。戦闘での除去と違い、補給切れではユニットの再建ができなくなるので、プレイヤーの士気崩壊となって終了というパターンでしたが、今回はそうならず時間で打ち切りとしました。
 今回は設楽さんが同盟軍で、金井が連合軍です。第1ターン、同盟軍はいつものごとくイベント「8月の砲声」をプレイ。リエージュ・セダン・ブリュッセル、と順調に攻略に成功しますが、連合軍イベント「モルトケ」や補給線切断の心配もあって西部戦線での攻勢は停止します。
 東部ではロシア軍がオーストリアに対し攻勢に出ていたのでドイツ軍がポーランド方面から反撃に出ますが、WarsawとOstrowiecに出たところで2方向から移動したロ軍に補給線を切られてしまいます。しかし片方は戦闘で叩き出し、もう一方は逆に補給線をおびやかすことで退却させ、事なきを得ました。
 その後は独軍が順調に押し出し、ユニット除去ボックス(再建可)にロシア軍のユニットばかりがたまっていきます。ロ軍は潤沢な増援カードで保っているようなものでしたが、そのころには独軍に放置されていた英仏軍の態勢が整ったので、ロ軍を救うためにも攻勢に出ます。戦闘値で劣る上に塹壕の置かれたボックスに対する攻撃のため大出血しましたが、独軍にもそれなりの損害を与え、足をとめることには成功します。
 調子に乗って東部北方で退却する独軍を追いかけてロ軍を前進させますが、これは失敗。逆に快速の独軍軍団によって補給線を切られます。が、戦略移動で南方から軍ユニットをまわすことにより何とかつなぐことができました。西部では塹壕のレベルが上がったリエージュを避けて、コブレンツ・ストラスブール・メッツと場所を変えつつ消耗戦。東部では互いに消耗しているうえに補給線切断に懲りているのでお互いあまり動かなくなりました。イベント「ブルガリア参戦」「サロニカ上陸」でバルカン方面、「ユデニッチ(ロシア・コーカサス軍)」「トルコの増援(トルコ・イルデルム軍)」で中東方面と支戦線で動いてみたものの、手詰まり感があり、時間も過ぎてきたので区切りとしました。


 また、途中参加の中野さんと栗原さんは、定番の「日露戦争」を対戦。初プレイとなる中野さんのロシア軍が、配置の隙を突かれて四平を取られて、投了していた模様。無名戦士有数のコレクターである中野さんだが、最近は購入を控えて、プレイを中心にしたいとの、熱い志を聞かせていただいた。


 遠田さんと先生は、『ドイツ戦車軍団(エポック/CMJ)』から、「エル・アラメイン」を対戦。遠田・英軍、先生・枢軸軍である。


BASIC3所収の「スエズを渡れ!」よりも、さらにシンプル


北アフリカでは例外的に機動戦となりくにいテーマであるが、このゲームでは別。双方とも遊びに徹して、あなたたちはボブ・サップですか?と疑いのひとつも入れたくなるほどのノーガードの叩きあい。最後にリングに立っていたのは、ズタボロの英軍であった。観戦者も多かったが、抱腹絶倒の対戦だった。
 別の卓では、大森(ソ連)さんと神村君(ドイツ軍)が、「ロシアン・キャンペーン2」を対戦。二人とも初めてのゲームだったが、遠田さんの的確なチュートリアルによってスリリングな対戦となっていたようだ。それにしても、いつの間にか装甲軍団が全部モスクワ前面に集まっていたのは笑った。そんな事情で、北方軍集団戦区では、リガ陥落が精一杯のドイツ軍。下手に史実に明るくないほうが、結構、やんちゃなプレイが出てほほえましくもある。
 私は、次回にそなえて、またまた怪しいゲームのルール研究をしていたのだが、いずれ実際のプレイで検証できれば。何をたくらんでいるのかは、内緒。




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