『Drive on Stalingrad』SPI,1978/DG,2001/Sunset,2001

PGGシステムというよりは『Army Group South』に近い42年夏期攻勢〜赤軍反撃キャンペーン。44年冬までの東部戦線をセミビッグゲームで繋いで完遂しようという当会の新方針第一弾にこのゲームが決まり、一日で行くところまで頑張ろうと企画された。最終ターンまでプレイしなければ意味がないという原理主義的な考えもあるが、あまり最初からレギュレーションをがちがちに縛っても、どうせ長続きしないので、我々にはこれくらい緩い縛りで丁度いい。もともと、たかが好き者の集まりなのだ。

プレイヤーは4名。ドイツ軍スターリングラード攻略担当が和伊氏、コーカサス担当が自称”エース”氏。赤軍はドン川流域担当が管理人(私)で、コーカサス方面担当がさばげ氏。ただし、戦区がはっきりと割れるまでは、第1装甲軍正面をさばげ氏が引き受けることになった(以後、敬称略)。もちろんエラータは全て盛り込み済み。

セットアップ時は、実はあまり考えることはない。どうせセットアップラインから1ヘクス以内に縛られているし、第1装甲軍は動いてこない。フレデリクス作戦の残滓になっている第4装甲軍と第6軍正面はたしかにきついのだが、2線防御にしておけば。たぶん半分は救える。ただ、あとあと役立つので司令部だけは最優先で生き残らせたい。

第1ターンは当然、ドイツ軍の全面攻勢。強ZOC-メイアタックを生かし、ドイツ軍は快調に前線赤軍を消し飛ばし、一部戦車軍団や親衛赤軍が包囲される。だが、赤軍はVPペナルティを度外視して、戦略撤退(ZOC無視で移動可能:ただし東方向にしか移動できない)。4PzA正面の赤軍はドン川東岸に逃げ去り、1PzA正面の赤軍も、最低限の足止めを残して、ロストフ・ナ・ドヌに向けて総撤退だ。強ZOCなので装甲師団の正面に1ユニットだけでも貼り付けておくと、オーバーランをある程度強要できるのでそれなりに有効だ。管理人を除くと、皆、このゲームは初体験だったが、序盤3ターンは、逃げる赤軍を追い回す装甲部隊という展開がなかなかスリリングだ。

第4ターンになると、状況は一変する。まず赤軍にはドン屈曲部から北端まで、ドン川東岸にZOCで繋がれた戦線を構築しなければならない。このため膨大に思える赤軍狙撃兵も、川沿いに薄く展開しなければならず、また司令部の数が足りないので、約25%のユニットが補給切れとなっている。 


セットアップ状況。この広大なマップで我が会を代表する作戦的頭脳集団がしのぎを削る。
キャンパスの大きさに不満無し!


セットアップ拡大図。やはり第2次ハリコフ攻防戦の勝利は、
ドイツ軍にとっては賜だったのだな。

だが、一層きついのは南マップ(コーカサス方面)の赤軍だ。とにかく序盤の増援部隊が少ない上に、ドン川とロストフ周辺を抜かれると、まともに守れる地形もユニットもない。北マップから鉄道で輸送したり、マップの継ぎ目に近い場所に北の増援を湧かせて、南に歩かせたりと、非常にせせこましいマネジメントをして、さばげを増強するが……

「なんやこれ! U-6の騎兵ばっかりやないか! 親衛赤軍とか戦車軍団も回してくれよ!(さばげ)」
「こっちだって手一杯なんですよ! さばげさんを今からソ連邦騎兵元帥に任命しますから、その部隊で凌いでください(管理人)」

生き残るためには非情にならなければならない。というより、本音をいうとやたらとロストフ防衛にこだわって、ドン川河口部に守備戦力を集中しているさばげのグランドデザインに民族の存亡に関わる危惧を感じての、予備温存策であることをここに告白しておく。

さて、鬱陶しい足止め部隊と戦略撤退ですり抜けて行く赤軍にいらだちをつのらせるエースと和伊。ついにしびれを切らしたエースは、装甲師団を分割して、逃げる親衛師団を包囲に走る。同一師団効果を発揮してこその装甲師団。だが、バラしてしまえば2-13のヘボヘボ部隊だ。赤軍は戦略撤退で逃げるものと決めてかかった自称”エース”の油断に対し、20年来の古参購買者さばげがチャンスを見逃すはずがない。この独軍の愚挙をみて通常機動を選択した赤軍は、一部部隊を北上させて、第14装甲師団の擲弾兵連隊を完全包囲。6:1の攻撃で除去に追い込んでしまう。基本的にすご〜くドイツ軍に除去が出にくいゲームでのこの結果に怒髪天の和伊。

「プレイ前、〈装甲は集中運用が大切なんや! 装甲師団3スタックなら48戦力の無敵スタックが完成するんや!〉ってあれほど言っていたのに、何やってんですか! 一号艦が出ないからって手をぬいてんじゃないでしょうね!!(和伊)」


第4ターン開始時。さばげは気づかなかったけど、もう装甲師団が迂回準備に入っているんだよな。
そんな崩壊の序曲を他所に北部マップでは、防衛線構築作業がほぼ終了。ログを取りながら、管理人はうどんを喰っていた。

いずれにせよゲラゲラだが、1個装甲師団の無力化程度では、今そこにある危機を減じる効果はほとんどない。というか、第3ターンの枢軸軍ロストフ攻勢を凌いださばげは、やばすぎるワナにはまりこんでいた。

ドン川は、対岸に敵ユニットかZOCがあると、移動によって渡河できない。また、ドン越しの攻撃は防御側3倍なうえ、せいぜい2ヘクス正面からしか攻撃できないためスタックで守れればおおむね安心だ。しかし、ロストフ周辺はドイツ軍補給源に近い上、守る赤軍の数も少ないので、多少のリスクを度外視すれば、装甲師団は機械化移動と組み合わせて、簡単に側面を迂回して渡河してくる。それが第4ターンに可能になるのだ。

偉そうに言っているが、管理人も初めて赤軍でプレイした時、ドン川河口で頑張りすぎて、軒並み包囲された苦い経験を持つ。その事をそれとなくさばげに促しはしたのだが、装甲擲弾兵連隊の撃破で有頂天の耳に届くはずがない。果たしてエースはこのからくりに気付き、側面から2個装甲を渡して、ロストフ周辺で6個師団が包囲された。ただ、エースもこの包囲網の完成を急ぐあまり、やや注意を欠く自動車化師団の配置があったりして、反撃の危機にさらされたが、基本方針で破れたさばげの失敗は、戦術的な局地的優勢で覆るはずもなく、瞬間的に南マップの赤軍ユニットがマイコプ周辺の2ユニットだけという呆れかえる状況が発生した。こんな事もあろうかと、ヴォルガの東で予備化していた戦車軍団や狙撃師団6個を鉄道で送り込み、なんとか一息つかせるが、飛行場まで蹂躙されるさばげを口汚く罵る管理人がいたことはお伝えしておきたい。

北方に目を移そう。このゲームの枢軸軍で悩ましいのが、ドン川東岸の扱いである。進発点から目の前にあるヴォロネジ始め、ドン川東岸にはVPヘクスも多く、戦力も集中しやすいことから、ついつい装甲師団を振り向けたくなる。放っておけば、赤軍の戦力プールとなり、スターリングラード攻略時の側面への脅威となることから、可能なら先手を打って攻撃したくなる。だが、このゲームには「ヒトラー命令」というやっかいな仕掛けがある。これは作戦重点がランダムにダイスで決められてしまうと言うもので、もちろん、ランダムとは言っても、判定時のターン数と獲得勝利ポイントで一定の振り幅に抑えられてはいるが、これがたいていは「屈曲部以北のドン川渡河禁止」とか「北部マップに機械化師団は●個」までといった困った内容が目白押しで、この戦役においていかにヒトラーがコーカサスの油田に焦がれていたかと言うことがよく分かる(つもりになれる)。ヒトラー命令は毎ターン判定するが、ダイスで偶数が出た場合は以前の内容が継続される。今回はゲーム開始時からずっと偶数だったため、第6ターンの時点で枢軸は自由裁量の元、主戦場を選んでいる。だがついに第7ターン、ヒトラー命令〈C〉が発動された。「ドン川渡河禁止/北部機械化師団2個まで/マイコプをとれ/グローズヌイをとれ」などなど。その結果、ドン川北部に一旦攻勢をかけて赤軍予備を弱体化させてから南方旋回をする」という和伊の作戦方針は根底から崩壊し、自慢の第4装甲軍は軒並みコーカサスに向かうことになった。と言うことは、管理人としてはスターリングラードにアントライドと親衛歩兵のコンビネーションを作って、ヴォルガ東岸に予備を置き、ドン屈曲部にハイスタックの戦線が出来たら、後は余剰を南に送るか、ヴォロネジ北部に集めて、クルスク解放を目指すかしかやることがなくなってしまった。序盤の突破に時間がかかった第4装甲軍は、ヴォロネジ攻略を放棄していたので、本当にすることがないのだ(ガーン)。

コーカサスでも困ったことになった。このゲームでは、基本的に鉄道線を換装させながら補給源を前方に押し出し、鉄道が通っていない地域にはトラック補給網を設定して、補給物資を運搬する形で限定的な補給線をシミュレートするのだが、これほど精緻な補給シミュレーションを用意しながら、ユニットに対する補給切れペナルティがかなり甘いのだ。つまり、補給切なら全ての能力が半減するが、それで除去されることはないのである。極端なことを言ってしまえば、補給切れ装甲師団だろうが、機械化移動を合わせて毎ターン12移動力を発揮できてしまうので、遮二無二前進してグローズヌイを占領した後は、鉄道が延びてくるのをのんびり待っていればいいのである。もちろん、南方でもやがて反撃が始まるが、南方ではグローズヌイ〜バクー方面他、アストラハン方面、そしてトゥアプセやソチといった黒海沿岸まで、守らなければならない範囲が広く、時間が経てばドイツ軍に内線の利が確立してしまうため、南方での主体的な赤軍反撃がちょっと考えられないのである。

そんな感じで赤軍コーカサス崩壊が確定した時点で時間切れとなった。もちろん継続すれば、やがてヒトラーは改心し、スターリングラード攻防戦が始まり、大出血を余儀なくされたドイツ軍に、赤軍の大波が襲いかかるという展開になるのだろうが、今日はここで時間切れだ。

次にやる時は
●ヒトラー命令は一切無視。代わりに、屈曲部以北でヴォロネジ川〜ドン川を渡河したら、無条件で北方集中増援が適用される。
●補給切れのスタックは、毎ターン1ステップずつ喪失する。
以上2点のルールを盛り込んでプレイする事になった。ヒトラー命令で作戦方針が縛られるのは、どちらのプレイヤーにとっても不幸なことだ。せっかくこれだけの舞台設定が用意されているのなら、プレイヤーに与えられる自由度はもっと多くてしかるべきだ。これがプレイ後のミーティングで到達した意見だ。

もっとも、このぼんくら集団の集まりが、ルール解釈も適当で遊んでいた側面も否定できないので、くれぐれもこんな駄文を読んだ結果を鵜呑みにしないで欲しい。というのも、ヒトラー命令があろうがなかろうが、鉄壁のドン川防衛線を見た和伊は北マップで勝負を決める気などさらさらなく、はじめからアストラハン狙いだったと放言する始末。さばげ南方面軍の崩壊を見て、その意を改めて強くしたのだとか。そういう意味では、エース=和伊のイノシシ武者による枢軸軍は最高のタッグだったのかもしれない。■


時間切れのため、第7ターン終了で投了。ヒトラー命令で装甲部隊が謎の南進をしたため、鉄壁となったドン川防衛線。
ヴォロネジ北部では早くも赤軍の反撃が始まっていたという。


ゲーム終了時全景。ロストフ防衛線をなすすべもなく突き崩され、以後、あまりのふがいなさに酒に逃げたさばげ氏悔恨の残滓。
「まだや! わしはまだこんなもんやない! たのむ! もう一回!」
と泣きを入れていたが、めでたく「赤軍騎兵元帥」の称号を不動のものとし、例会は後半戦を迎えようとしていた。

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