『Barbarossa: Army Group Center(GMT)』他

5月21日(日)、ミドルアースにて鉄人デグ氏(以下敬称略)と『Barbarossa: Army Group Cemter(GMT)』を対戦した。発売から8年。現在に至るもなお東部戦線作戦級ゲームの最高峰といわれ、長らく、本当に長らくのこと仰ぎ見るにとどまっていた本作の世界に、遂に足を踏み入れる日がやってきた。とはいえ、ルール(和訳)部分だけでも40ページを軽く超える師団/連隊級ゲーム。最初からフルマップ級のシナリオに着手できる準備の余裕が無く、まずはシナリオ1〈イェルニャ攻勢作戦〉を対戦する事になった。

マップIの一部だけを使用するミニシナリオで折りたたんでプレイするのもちょっと抵抗があったので、該当箇所だけカラーコピー。これなら今後のインストも簡単だ。設定は、スモレンスク陥落後、モスクワ跳躍に向けてグデーリアンが形成していた突出部に対するソ連軍の反撃で、装甲部隊がキエフへの南方旋回に引き抜かれて弱体化した結果、9月にドイツ軍が一旦は撤退を余儀なくされた戦いである。この辺の事は、06年3月発売の歴史群像第76号に詳しい。

私がソ連軍、鉄人がドイツ軍ということで開始。練習シナリオということもあって、補給や補充、増援といった、ゲームの展開に大きな影響を与えるルールはオミットされており、システムの根幹である移動と戦闘に集中してプレイできるようになっている。細目にまで及ぶとキリがないので、両軍のシークエンスだけざっと説明すると、

枢軸軍ターン
 移動フェイズ
 ソ連軍対応移動フェイズ
 戦闘フェイズ
 機械化移動フェイズ
ソ連軍ターン
 機械化移動フェイズ
 ドイツ軍対応フェイズ
 戦闘フェイズ
 移動フェイズ

となっている。基本的には移動フェイズを終えたら戦闘宣言が行われ、これに防御側が対応移動。戦闘は任意だが、実施するユニットはZOCに存在する敵ユニットをすべてを攻撃しなければならないという、半マストアタックのような仕組み。戦闘はd10を使用で、修正要素はほとんどDRMに変換される。枢軸軍が移動→戦闘と、オーソドックスなシークエンスの中で作戦を組み立てられるのに対し、ソ連軍はわずかな機械化ユニットだけが先に移動し、戦闘を解決した後に全体の移動となっているだけでなく、様々な場面で〈司令部〉の制限に泣かされるため、41年秋季のソ連軍の悲哀がそこかしこに現出する。よく言う「指揮の硬直」が至る所から顔を覗かせるのだ。


セットアップ直後の状況。ヘクス径が小さく、スタックをいじる際にかなりごちゃつくので、
ピンセットは必須か。写真のカラーコピーは105%で印刷したが、それでもヘクスが窮屈だった。

シナリオ勝利条件的には、第10装甲師団が予備解除されない序盤のうちに、ソ連軍はイェルニャを奪回し、ドイツ軍野戦部隊に打撃を加えればいいのだが、連鎖戦闘に巻き込まれて重点に戦力を集中しにくいという罠にはまった上、全般的に出目が悪く、戦闘結果が次々に自壊を導くという最悪の展開。得点要素にほとんどからめ無いまま、ついに第10装甲師団が動き出し、どうにか穿ちつつあった左翼突破口も完全にふさがれるにいたり、投了を申し入れた。鉄人の的確な防御部隊運用に対して、脅威となるような戦闘をほとんど行うことができなかった。完敗である。

それでも、いくつか教訓めいたことを。まずソ連軍が注意すべきは移動力がかなり過激な足かせになっていることだ。ドイツ軍の歩兵がおおむね5MPなのに対し、ソ連軍の正規部隊は4MP、一部民兵には3MPなども存在する。どういうことが起こるか? 例えば森林地帯での戦闘で、攻撃側ソ連軍歩兵が退却の結果を受けたとする。この場合、2ヘクスほど下がることになるが、移動は戦闘後に実施なので、また戦闘開始地点まで戻ればいい。通常はそう考える。ところがこのゲームでは敵ZOCに侵入するために追加1MPが必要なため、ヘクスあたり2MP必要な森林で2ヘクス進んで敵に隣接するためには5MPが必要なのだ。ドイツ軍に可能なことが、本当にわずかの差でソ連軍には実施できないのだ。

これはほんの一例である。ルールを読む限りでは煩雑にしか思えなかったこと、あるいはよく意味の分からなかったことが、盤面で運用されると、とたんに精彩を放ち、デザイナーが意図したいい意味の〈悪意〉に翻弄されることになる。何度もチャートを見直したり、ルールを確認しなけらばならない場面があったが、疑問には全てどこかで答えが用意されているし、それが合理的であることから二度目の確認はほとんど不要だ。それだけではない。テクニック的な運用に注意を払わなければならない一方で、しかし重点形成の設定に失敗すれば、テクニックはほとんど意味をなさないであろうデザイン方針など、本作には作戦級ゲームの醍醐味がぎっしりと詰まっている。今回省略した補給ルールは、この重点形成という課題により大きく影響をしてくるはずだから、次回はより深みのある対戦になるはずだ。ミニシナリオの1回の対戦でそこまで言い切っていいのかとも思うが、扉の向こう側の景色は、間違いなく絶景だ。


この直後のソ連軍の攻撃がことごとく失敗し、VP獲得のメドがまったく立たなくなった時点で
鉄人に投了を申し入れた。システムの特徴を見抜き、対応策を次々にうってくる鉄人のスキルは
私よりかなり高いところにあることを心底実感。精進せねば。

もともと、枢軸軍の電撃戦に焦点を当てたシステムなので、ドイツ軍に攻撃動機が薄いシナリオ1は、ゲーム全体の中では特殊な設定かもしれない。それでも、ユニットの運用というゲームの根幹面をよく理解させてくれる。しばらくは、自分の持てる作戦級のリソースをこのゲームに投入して、じっくりと研究したい気持ちにさせる、なんともなまめかしいゲームだった。次回、6月11日(日)の大阪無名戦士定例会で、また鉄人と対戦する事になるだろう。その時はシナリオ4〈北方軍集団〉で、またソ連軍を担当する予定である。

◆  ◆  ◆

5月14日(日)に会長不在の中、会長宅で行われた幹部会の様子だけ簡単に。

●『関ヶ原(エポック/サンセット)』
自称”エース”=西軍 鉄人=東軍
判定:引き分け

●『砂漠の狐(エポック)』
自称”エース”=連合軍 ポヤ郎=枢軸軍
判定:連合軍圧勝

●『ラグナロック作戦(ツクダ)』
麦彦=帝国軍 和伊愛=自由惑星同盟
判定:自由に乾杯

●『○○○○○○(▲▲)』
管理人=連合軍 いちねんせい=ドイツ軍
判定:収録につき秘匿


鉄人とポヤ朗を相手に二面差しで応じる豪腕プレイヤー自称”アース”(中央)
これだけ強いのに、交通違反ではふんだんに切符を切られ、もうすぐ機械化歩兵から
一般歩兵に格下げになってしまうとのこと。
「俺の二十枚はいらないから、俺の二点を返してくれ!」

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